錦鯉日記 その10 墨について考える。

元気ですかー!

今回は商品ページの鯉をサンプルに墨についての考察です。
将来性豊かな銀鱗白写りです。まず、写真の鯉の墨について考えてみましょう。

沈んでいる墨、全体的にはっきりしていない墨、ではこの鯉の墨が今後どのように変化して行く可能性が有るのかを見極めるポイントを少しご紹介します。

ザックリな説明になりますが、あくまでも私の経験上から持った私見だという事をお忘れなく。
まずこの鯉をパッと見て感じるのは全体的に墨はボケていますが口先、尾の部分の墨のトーンが合っている事です。体の中央の墨模様の色の強い部分も同じトーンですね。

この場合、前後の墨のトーンが合っているという事が重要で、前後に強い墨質を持つ鯉は大体が体の墨はキッチリ出て来ます。
かつ、目の墨の強さも重要です。
体にほとんど墨が出ていなくても目が黒々とした鯉は年月が掛かったとしてもいずれ墨が出てくる可能性が高いと言えます。

白写りに関して言えば墨のパターンは大きく分けて2パターン有り、青地(白地の下に薄く墨が在る事)から墨模様が出てくる場合と全くの白地から急に墨が出てくる場合が有ります。

これは系統によって、どちらかに分かれております。
一般的なのは青地を持つ鯉ですが、後者のケースの鯉は錦鯉の経験を何年積み重ねても見極める事は不可能です。
本当に急に白地から墨が出現します。それは柔らか味のある墨ではなくガラスを割った様な墨で白地と墨の間のグラデーションが一切ありません。

初めは薄墨の様なものが急に現れ、それがあれよあれよという間に墨模様になります。
この系統の白写りは現在では作っている生産者が激減しております。
そりゃそうです。いつ墨が出て来るか作っている本人にも分からないのですから。
大体は当歳の時は、ある程度墨のある鯉を2歳に立てるのですが、秋に二歳で揚がって来ると多くの鯉が白棒になっています。
いわゆる業界用語で大根と言われるようになるのです。
生産者は野池で二歳にする鯉を選別する際、墨模様は関係なく墨質の強い鯉を選びます。
ですが多くの鯉が大根になり、それらが今度はいつ墨が出て来るか分からないのですから。
商売としての計画が成り立たないですよね。

少し話はそれましたが、ヒレにある墨も重要な見極めのポイントです。
昭和でも白写りでも、特に手ヒレにある墨の形は参考になります。
写真の鯉はいわゆる元黒と呼ばれる墨の形で、この形を持つ鯉の体の墨は徐々に締まってくる傾向が有ります。
よりクッキリしてくるという事ですね。

逆に手ヒレに在る墨の形が扇子の骨の様に流れている場合は体の墨際も決まりにくい傾向にあります。
こんな事を話すと鯉が売りにくくなるのでは?と思われる方もいるかもしれませんが、大丈夫です。私たちはそういう所にもこだわって鯉を生産しております。

今回お話した事はあくまで傾向という事です。
こんな簡単な部分だけで鯉の全体を見極められるほど錦鯉は簡単ではありません。
見極めには色々な要素を検討しなくてはなりません。
大器晩成の系統の鯉、早熟な系統の鯉とでは成長過程が全然違います。
一度の機会を見逃さず感じ、経験を積み重ねながら少しづつ知って行くものです。

よく言っていますが錦鯉の沼は深いのです。
錦鯉は長生きします。無理な飼育をしなければ20年以上生きる魚類です。
安価で購入された鯉でも後に大化けする可能性も十分にあります。

皆さん、楽しんで。
墨を持つ種類の鯉は沢山います。それぞれの墨についてのお話はまた、機会を見てお話しします。
では。